マニフェスト

マニフェスト

ジェンダー平等を目指すマニフェスト
Our Manifesto for the Realization of Gender Equality

第二次世界大戦終結後、 60年の歳月が流れ、私たちは今、改めてグローバルな視点から、平和と全人類の幸福を強く希求致します。 また、 そのために私たち自身が努力すべきことを宣言いたします。

日本ジェンダー学会は、 1997年の発足以来、 意思決定機関である理事会の性比は相半ばし、諸活動において文字通り男女共同参画の実践を通して、 ジェンダー平等の実現を目指して活動を続けて来ました。 したがって私たちは今、 特に地球規模において追求すべき重点課題として、 社会的・文化的な性別取り扱いにおける不平等を解消することに力を入れたいと思います。 ジェンダー平等の達成度は、 今や国際的な評価の基準として重視されていますが、 残念ながら日本はこの点において遅滞している現状を遺憾に思います。 日本ジェンダー学会は千年紀の変わり目に「世界女性文化会議・京都2001」 を開催し、約千年前の日本の文化創造において、世界に類をみないほど優れた女性たちが登場する一方、 生産活動・経済活動においても女性の果たした役割が大きいことを検証しました。 また男性も女性の創造的な文化や生活文化に親しんできたことも明らかにしました。 これを私たちは、 日本の本来のジェンダーでありジェンダー観であると考えます。

ところが、 近世以降の武家政治の確立、 近代以降の帝国主義的な国民国家の形成によって、 男性支配の社会機構が構築され、 女性の社会的地位が著しく低下しました。 しかしながら、 第二次世界大戦の終結によって日本は民主主義国家として新たに出発することとなり、 男女平等の実現が重要な目標とされ、 女性の参政権の確立、 学校教育における男女共学の実現や労働の場における男女同一賃金の規定など、 画期的な改革がはかられました。 しかしながら、 その後の経済の高度成長政策進展の中で、 生産性向上への配慮などから 「男は仕事、 女は家庭」 という固定的な性別役割分業を是認する風潮を生じました。 そのことから自立と社会参加の機会が、 性別によって不平等な結果を招き、 現行の年金制度にみるように子供を生み育てる人々の老後保障を著しく不利なものとし、 結果として社会の少子化を招きました。 また生産性追求に偏したことから公害問題など環境破壊が進む一方、男性が家庭や地域で過ごす時間を縮小させ、男性から人間らしいゆとりある暮らしを奪いま した。このことは次代の健全な育成や地域社会がかつて保有していた力を著しく阻害する結果を招きました。

昨今の世界的な動向として、他民族の多様な価値意識を理解し共生を図ることを怠ることによって武力行使に及ぶ苛烈な紛争を招き、地球と人類の未来への危惧 を抱かざるを得ないほどの状況にあると言えましょう。これらの行為は、一方の性に偏した意思決定機関によって招かれたものでもあります。 このように危機に立つ現代社会のなかにあって注目すべきことは、 今、 世界の国々においてジェンダー平等を図る施策が打ち出され、 男女平等の実現によって少子高齢社会の問題の解決や環境保持をはかるところが現れているということです。日本においても、このような世界の動きに鋭敏な対 応をはかるべきであり、私たち自身もその動きに沿う慣習を育てなければならないと思います。高度工業化社会におけるテクノロジーの発達によって女性の新た な領域への就業が促進され、また教育機会の増大は女性の力の付与に大きく貢献しました。女性の生物学的な不利を克服する社会的な環境整備は大きく進展しま した。現代社会の諸問題を克服するための曙光が見えるとき、私たちは日本が男女共同参画社会を目指すことを重点課題としていることを、心からうれしく思い ます。
人類を構成する男女両性の人間として幸福な、尊厳ある暮らしを実現するには、男女両性が社会のあらゆる意思決定の場に平等に参画することが必要であるか らです。そのことによってこそ、少子高齢社会の諸問題や環境問題の克服、平和の保持などが可能となると考えるからです。その前提として、社会的・文化的性 (ジェンダー)に関する歴史的・比較文化論的な適確な認識を必要とします。

ところが昨今、この社会的・文化的性(ジェンダー)をめぐって、歴史的・比較文化論的な考察を欠いた言説が一部に現れ、日本のジェンダー平等の達 成を遅延させかねない風潮があることを、われわれは極めて遺憾に思います。“ジェンダー”という用語の使用を規制する情報媒体(メディア)があり、また男 女共同参画社会構築のための条例作りに反対する意見を持つ者が声を大にするなど、あまりにも後進的であり、また日本が抱える少子化問題などの解決を著しく 遅滞させるばかりか、言論の自由を圧殺しかねない風潮であると思われます。
本年6月23日、 日本学術会議ジェンダー学研究連絡会議および21世紀の社会とジェンダー研究連絡委員会は「男女共同参画社会の実現に向けてージェンダー学に役割と可能 性」と題する報告書を発表しました。私たちの日本ジェンダー学会は、日本で最も早くから学会名として「ジェンダー」と銘打ち、男女共同参画を実践して来た 立場から、学会・言論界・政界・経済界等に下記を要望し、また改めて私たち自身の活動方針を宣言致します。

1.学会・言論界・政界・経済界等への要望

男女両性が平等で人間らしい幸福な生活を享受するため、「ジェンダー」問題に関する的確な認識を深め、男女共同参画による意思決定を基盤とする社会の構築に向かって、共に努力していただくこと。

2.日本ジェンダー学会及びジェンダー研究関連学会の努力

現代社会における「ジェンダー」問題の研究の重要性を改めて確認し、学会関係者みずから社会活動の全領域における男女共同参画を実践し、学際的に「ジェンダー」の主流化に取り組みつつ、社会に対してジェンダー平等を進める学問的成果を提供すること。

2005年7月25日
日本ジェンダー学会理事会