日本学術会議会員任命拒否問題に関する日本ジェンダー学会理事会の声明文

2021年1月11日

日本ジェンダー学会理事会は日本学術会議協力学術研究団体に加盟している団体として、会員候補者6名の任命拒否問題に関して、以下の声明文を公表する。

国際的指標で取組の遅れが指摘されているジェンダー平等社会(男女共同参画社会)の達成は、日本が今後より一層努力すべき目標であり、日本学術会議は長きにわたって、この目標に貢献してきた。日本学術会議は、24期(2017年10月~2020年9月)に政府目標の女性会員比率30%を超え、科学者委員会男女共同参画分科会に加えて、三つの部のすべてにジェンダー平等分科会を設置して審議活動にあたってきた。これらの審議テーマは、男女共同参画、親族法・相続法改正、SOGI(性的指向および性的自認)の権利擁護、人口縮小問題への対応、性暴力犯罪への対応強化など市民生活に関わる問題を含み、成果は多くのシンポジウムや提言等で公表してきたところである。日本ジェンダー学会は、日本学術会議が指定する協力学術研究団体の一つとして、日本学術会議の審議活動の貢献に寄与できることを目標に活動を続けている。日本学術会議の活動が規制されることは、日本ジェンダー学会の研究活動にとって由々しき事態と考える。

2020年8月31日付で日本学術会議が推薦した会員候補者のうち、6名が首相によって任命されなかった。日本学術会議法によれば、日本学術会議の推薦する会員候補者を内閣総理大臣が任命することになっている。この任命は形式的なものであって、政府は会員候補者の任命を拒否しないことを1983年当時の中曽根内閣総理大臣が国会で述べている。このことは日本学術会議が政府から「独立」して活動する基礎となっていることを示している。ところが、今回菅内閣総理大臣によって6名の任命拒否がなされた。しかも、その任命拒否の理由が明確にされていない。

これは、憲法23条で認められた学問の自由を侵害するおそれがある。日本学術会議は第1回総会において、「これまでの日本の科学者の態度を強く反省し、平和的復興と人類の福祉増進のために貢献」するという声明を発表しており、それを実現するためには、憲法に保障する学問の自由が不可欠である。これを侵害することは許されない。そもそも、日本学術会議の会員は、選考規程等にしたがい適正な手続と基準に基づいて推薦されており、すべての会員候補者について任命拒否にあたる理由は見当たらない。また、学術的見地から発せられたいかなる見解も、専門的批判によって検証されるべきであり、政府によって理由なく排斥されるべきものではない。6名の任命拒否を取り消し、会員として任命することを求める。

日本ジェンダー学会理事会